コラム

アスクワンのコンサルタント・コラム

Vol.1

コラムタイトル「企業もやっぱり外見が大事?」

 コンサルタント 渡辺 伊津子

■外見を取りつくろう企業

ここ最近めっきり寒くなりました。しっかり防寒して、風邪をひかないようにしたいものです。だからといってあまりに着込んでしまうとなんだか「歩く雪だるま」のようになってしまいます。防寒も必要だけど、やっぱりおしゃれに着こなしたいという気持ちは誰でもありますよね。洋服を選ぶときには、流行も取り入れたいし。流行を取り入れることで、周りの人から良い印象やイメージを持ってもらえたら嬉しいものです。こんなふうに、わたしたちは外見を取りつくろうということをしています。

企業も人間と同じように外見を取りつくろっているのをご存じですか?ここでX社を例として考えてみましょう。X社は最近、新しい人材育成方法である手法Aを導入しました。この手法は、近年マスコミでも大きく取り上げられており、既に多くの大企業でも導入されています。有名なコンサルタントや専門家たちも、手法Aの優れた点をとりあげた書物を出版しています。手法Aはいまや世間が認めた人材育成手法です。

ここで、なぜX社がAという手法を導入することにしたのか、その理由について考えてみましょう。普通に考えれば、それはAという人材育成手法によって、社内で優秀な人材を育成することができるからということになるでしょう。しかし別の視点から、X社は「外見を取りつくろう」ために手法Aを導入したという解釈も成り立ちます。手法Aは世間で評判になっています。ですから、それを導入することでX社の評判を高めることが可能です。世間の人々やその業界の多くの企業が認めているものを企業の中に積極的に取り込むことで、会社のイメージや印象を良くすることができるのです。イメージや印象がよくなれば、X社に就職したいという人材が増え、採用活動がよりスムーズに運び、さらには、ブランドイメージや社会的な評価も同時に高めることができるでしょう。

■生き残りをかけた「正当性」の確保

このように、企業も人間と同様に「外面を取りつくろう」という方策をとっているとすればどうでしょうか。これは企業が生き残るための1つの生存戦略と捉えることができます。より良い製品やサービスを効率的に提供することで企業が生き残ることができるというのはある意味当然だといえますが、そのほかに、より巧みに自己(その企業)の存在や活動を「正当化」することでその存続や成長の確率を高めることができるという解釈が成り立つわけです。

以上から、ファッション同様に、経営手法や組織のあり方にも流行があるのはなぜかがわかります。企業は、社会で認められ評価されている、すなわち皆が認めている要素を積極的に企業のなかに取り込むことで、社会的なお墨付きを得ようとしているのです。こうして、同じ戦略をとる企業が増えれば、ますますそれは流行していくということになるでしょう。こんな視点から企業の活動をみてみると、今までみえてこなかった企業の生存戦略の新たな一面がみえてくるような気がしませんか?

参考文献

  • Meyer,J.W. and B.Rowan(1983)“Conclusion : Institutionalization and the Rationality of Formal Organizational Structure,”in J.W.Meyer and W.R.Scott, Organizational Environment : Ritual and Rationality , Bevery Hills : Sage.
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