コラム

アスクワンのコンサルタント・コラム

Vol.19

コラムタイトル 「人の認知は千差万別」

 コンサルタント 渡辺 伊津子

みなさん、こんにちは。いきなりですが、人はそれぞれ物事の捉え方や受け止め方が違いますよね。だから、極端な言い方をすれば、同じものをみても悲しくなる人もいる一方で、笑う人もいるわけです。自分と物事の捉え方が似ている人は同じような感情を共有できますし、親近感を持ててなんか気が合うなーなんて感じたりします。

ここで、ちょっとお題を出しますので考えてみてください。皆さんは男性と女性のどちらが、リーダーシップがあると思いますか?当たり前のことですが、リーダーシップという言葉をどう捉えるかは人によって異なりますね。言葉というのは多義的な意味を持っているので、リーダーシップもさまざまに解釈できます。たとえば、リーダーシップをカリスマ性のような「人を惹きつける特別な力」と捉える人もいれば、「他者を支援する力」と捉える人もいるでしょう。もし「他者を支援する力」と捉えた場合、女性のほうがリーダーシップがあるという意見が導きだされるかもしれません。人はそれぞれに「リーダーシップ」を捉え、その解釈に沿って男性か女性のどちらかを選ぶでしょう。

ではここで、複数の人が集まった場で、このお題についての自分の意見を伝えなければならないとしましょう。たとえば「わたしはリーダーシップを○○力と捉えました。この○○力の点からすると、女性のほうが強いと思います。たとえばこんな状況を考えてみてください・・・・」などと、自分がどのようにリーダーシップを捉えたのか、そのうえで男性か女性かについて意見を伝えなければならいとします。こんなゲームをしたとすれば、お互いに他者の捉え方の違いを実感できると思います。人はそれぞれ自分自身の経験や知識を持ち寄って「リーダーシップ」という言葉を捉えます。結果としてほんとうに人の認知はバラバラだと再認識することができます。

それだけではありません。このゲームをやってみるともう1つわかることがあります。それは、人の認知はバラバラだということを前提としたとき、「相手に何かを伝えるときには、物事に対する自分自身の捉え方をきちんと相手に伝えることも重要になってくる」ということです。きちんと伝えれば、相手はたとえ自分と意見が違ったとしても、「リーダーシップを○○力と捉えれば、そういう意見も確かにあるよね」と納得してくれる可能性が高まるからです。

ここで上司が部下に対して仕事を依頼する場合を考えてみましょう。上司は部下に、ただ単に「この仕事をやってくれ」といったのでは不十分かもしれません。なぜなら部下はその仕事を頼まれたことに不満を抱く可能性もあるからです。たとえば、「こんな仕事はしたくないのに、なんで自分に頼むのか」と感じたり、「この仕事はハードルが高いな」と思っていたりするかもしれないからです。こんなとき、上司が「この仕事は君の成長にとって~な意味がある。だからぜひ挑戦してほしい」とか、「この仕事は現在のチームにとってとても~だととらえている。だからやってほしい」と伝えたらどうでしょうか?部下の納得性は少し高まるのではないでしょうか。

当然のごとく、人が違えばこのような物事に対するとらえ方の違い、すなわち「認知のズレ」は生じます。認知(捉え方)は通常のコミュニケーションでは「見えない部分」です。人はいちいち、「私はこの仕事をこんなふうに捉えたので、とても嬉しいです(悲しいです)」とは言いませんよね。でも見えないからといってないがしろにはできません。なぜなら、その捉え方に応じた「感情」が生まれてくるからです。感情は人間のやる気や行動に大きな影響を与えます。だからこそ、まずお互いの認知のズレを明らかにすること、そしてそのズレをすり合わせるための「対話」を行うことが必要不可欠になってきます。対話についてはまた機会があったら別のコラムで書きたいと思います。

最後になりますが、人間関係がこじれているとか、話がかみ合わない、コミュニケーションがうまくいかないと感じているビジネスマンのみなさん、ぜひご自身の「捉え方」を面倒くさがらずに相手に伝えてみてください。思ったよりも相互理解が進んでよい成果が出るかもしれませんよ!

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