コラム
アスクワンのコンサルタント・コラム
Vol.2
コラムタイトル「協働からみるリーダーの役割」
コンサルタント 渡辺 伊津子
■空回りしてしまうリーダー
リーダーになると、どうしても肩に力が入ってしまうことはありませんか?リーダーになったとたん、自分ひとりですべてを背負い込んでしまった経験はありませんか?周りから「もう少しメンバーに任せてみたら?」などとアドバイスをもらっても、なかなかうまくいかないものです。とにかく自分の力で何とかしようと頑張ってしまうけれども、そのわりに成果があがらず空回りしてしまうことがあります。
そんなとき、次の言葉が現在の発想を転換するキーワードになるかもしれません。「協働」という言葉です。「協働とは、目的の実現に向けてひとびとが力を合わせること」です。協働によって、一人の力ではとうてい実現できないことが達成されます。わたしたちが働いている企業では、日々この「協働」が起こっているのです。
協働という観点からリーダーの役割を捉え直してみると、「自分がリーダーになるのではなく、他のチームメンバーや部下をすべてリーダー役に仕立てる」こともリーダーの重要な仕事ということに気づきます。なぜなら、協働を確保するにはチームや組織の雰囲気を盛り上げることも重要な1つの役割ですから。以下では、「協働重視のリーダー」についてみていきたいと思います。
■「協働重視のリーダー」とは
これまでチームで行ったプロジェクトや仕事を想い出してみてください。チームやグループで行った簡単なゲームなどでも構いません。そのチームのなかにこんな人はいませんでしたか?
・ひとびとのアイデアを活かそうとする人。
・他の人の目標達成に進んで貢献しようとする人。
・全部自分でやろうとせず、人々が積極的に取り組むよう工夫する人。
・ひとびとが協力しあうような雰囲気づくりをする人。
いかがでしたか?このような行動をとる人は、「協働」の本質を理解しています。仕事は他者と共に協力することによって成り立っているということをよく理解している人は、リーダーというだけで、肩に力が入ってしまったり、仕事を一人で抱え込んで悩んだりすることは少ないかもしれませんね。
ミンツバーグ(H.Mintzberg)という経営学者は、ここでいう協働重視のリーダーが行うマネジメントを「関与型マネジメント」と呼んでいます。関与型はやはり人々が協働するのを後押しします。以下では、その特徴を見ておきましょう。
「関与型マネジメント」の特徴
①関与型リーダーはひとびとをコントロールするのではなく、人々を協力させる。
②背後に退き、なるべく大勢のひとびとがリーダー役を務めるようにする。
③「人々を積極的に関わらせるために」、自分が積極的に関わる。
④敬意、信頼、配慮、鼓舞、傾聴によって、ひとびとが本来持っているエネルギーを引き出す。
いくらリーダーといっても自分のアイデアや力で引っ張るには限界があります。協働重視のリーダーは、自分がグイグイ引っ張るというよりも、ひとびとのアイデアや力を発揮してもらうために尽力します。リーダーとしてうまく振る舞おうとするのではなく、あえてリーダーとして振る舞わないところに協働重視のリーダーの価値があるのです。複雑な問題や多くの困難な経営課題に取り組まなければならない状況においては、メンバーひとりひとりをリーダーに仕立てる協働重視のリーダーが今まで以上に必要とされています。
引用文献
- ・ヘンリー・ミンツバーグ(2011)『マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』日経BP社