コラム

アスクワンのコンサルタント・コラム

Vol.5

コラムタイトル「関連づけのアンテナを立てよう!」

 コンサルタント 渡辺 伊津子

■忙しく動きまわる経営トップ

仕事上、多くの経営者の方や経営幹部の方々にお会いする機会があります。成功している経営者の方にお話しをうかがうと、ある種の特徴があると感じることがあります。それは皆さん、日常的にとても忙しくあちこち動き回っていらっしゃるということです。とても行動志向が強いと感じます。仕事のみならずプライベートでも、いろんな場所へ出かけ、さまざまな人と会い、意見を交換し、さまざまな知識や経験を蓄えてみえます。さらには、必要としている人に自分が得た情報や知識を積極的に提供しています。わたしなどにも非常に楽しいお話を聞かせてくださいます。

よくよく考えてみると、経営者のこのような「行動志向」は非常に現実的な合理性があるように思います。現在のように先が見えない不確実性の高い時代には、じっくり熟考して計画してから行動しても物事がなかなか思い通りに進まないことがあります。それよりもむしろ行動しながら考えることで、考えているだけでは見えてこなかった可能性に気づくということがあります。また、行動した結果として得られる経験は、このコラムのテーマである関連づけスキルとも深く結びついています。

■関連づけのアンテナとは?

ここで関連づける力を定義しておきましょう。関連づける力とは「一見、無関係に思える問題やアイデアをうまく結びつける力」(Dyer,Gregersen,Christensen,2011)のことです。この定義は、2012年に出版された『イノベーションのDNA』からのものです。この本の著者である、クリステンセン、ダイア―、そしてグレガーセンによれば、破壊的イノベーターと呼ばれる人々は「現状維持バイアス」と呼ばれる認知バイアスを回避するのに不可欠な次の5つの力を持っているといわれます。5つのスキルとは、①関連づけスキル、②質問スキル、③観察スキル、④人脈スキル、そして⑤実験スキルです。②~⑤についてはまたの機会に譲るとして、このコラムでは①の「関連づけスキル」に焦点を当てます。

たとえば、庭という言葉から何を連想しますかと尋ねるとしましょう。そうすると、多くの人は、小さいころ遊んだ自分の家の庭のこと、最近訪れた○○庭園のことなど連想が広がっていきます。どんどん連想が広がっていけば、一見すると「庭」とは関係ないものまでつながっていくでしょう。また自分だけではやはり発想に限界がありますが、いろんな専門分野の人々と交流し意見を交換すれば、異なる視点からの発想やアイデアが広がります。

関連づけという視点からみてみると、経営者達はその行動志向によって、常に自らの経験などを増やし、自社のビジネスに役立てているといえるようです。ときどき「わたしは常にアンテナを立てている」とおっしゃる方がいますが、このアンテナとは、日頃生じている出来事とビジネスを関連づけるためのアンテナ、つまり「関連づけのアンテナ」という意味ではないでしょうか。

■なぞかけに挑戦!

さて、関連づける力について簡単に述べましたが、日本でも関連づけのエッセンスを取り入れた言葉遊びがあります。それは「なぞかけ」です。「○○とかけて○○ととく、そのこころは?」というあれです。なぞかけでは一見無関係のものの結びつきを見出すところにそのおもしろみがあります。最近では脳トレとして流行しているようです。そこでこのコラムではなぞかけをビジネスの思考法やアイデア発想の方法として取り入れることをお勧めしたいと思います。日常の出来事や経験を見逃さず、気づいたときに「○○とかけて自社ビジネスととく、その心は?」と自問自答してみるという遊びです。遊びですから気楽にやってください。なんでもかんでも、自社のビジネスや自分の課題と関連づけるクセをつけると、経営アンテナがピンと立って、新製品や新サービスを生み出すことになるのではないでしょうか。ぜひ挑戦してみてください。

引用文献

  • J.Dyer,H.Gegersen,C,Christesen(2011)Innovators DNA,HBS Press.
  • (クレイトン・クリステンセン/ジェフリー・ダイア―/ハル・グレガーセン著,
  • 櫻井祐子訳(2012)『イノベーションのDNA 破壊的イノベーターの5つのスキル』翔泳社.)
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